Dr.Nakajimaプロフィール 免疫治療専門医 Dr.中嶋
Dr.中嶋ブログ 不定期更新中!! 良寛の心
「がんが進んでしまっても長生きはできる」

「がんが進んでしまっても長生きはできる!」
中嶋靖児 著
ごま書房新社より好評発売中

群馬県の上毛新聞に取材掲載されました。

群馬県の上毛新聞に取材掲載されました。

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伊勢崎産業会での講演が
上毛新聞に掲載されました。

群馬県の上毛新聞に取材掲載されました。

リンパ球免疫治療の講演が
新聞に掲載されました。

リンパ球免疫治療ー中嶋靖児公式サイトTOP免疫はがん治療の決め手「リンパ球免疫治療」で眠ったがん細胞

免疫はがん治療の決め手
「リンパ球免疫治療」で眠ったがん細胞

平成14年3月13日のことでした。私が東北のある村の健康づくり講演会に講師として招かれ、がん予防についての講演をしたときのことです。

講演が終わって拍手が鳴り終わろうとしたそのときに、一人の婦人が花束贈呈のために壇上に上がってきました。よく見ると、その婦人は現在私が治療をしている癌の患者さんではありませんか。私は全く予想していませんでした。

私は村の文化会館の開所式に村長さんに招かれ、前橋から遠く離れた東北のその村にはるばる出かけて行って講演をしたのですが、そこで私が治療している自分の患者に出会うとは夢にも思っていませんでした。司会者の説明では、その婦人は村の住人で、自分からすすんでその役を申し出てくださったそうです。私は感謝してありがたく花束を頂戴いたしました。

その婦人は今年(平成21年)65歳になった方ですが、実は10年前の平成11年には大腸癌の手術を受けていました。ところが病気は進行していて、次の年の平成12年には、癌は早々に脾臓に転移してしまったのです。

大腸癌が進行しますと、通常は肝臓に転移します。大腸癌が脾臓に転移することは極めて稀なことです。担当医もこのことを不思議に思ったに違いありません。そのこともあって脾臓の再発癌に対して、手術を受けることを熱心に勧めたようです。 そして脾臓摘出のための再手術が準備されました。手術を行おうとしたその病院は、東北では屈指のがん専門の病院で、多くの医師によって手術についての検討がなされたようです。

ところが開腹してみると、癌は脾臓ばかりでなく腹膜にも転移していました。まだ明らかに腹水が貯まるほどではなかったようですが、肝臓の表面や腹膜は全体にザラザラとしていて、癌は種を播いたように腹中に広がる癌性腹膜炎になっていたのです。これでは手術どころではありません。直ちに手術は中止され、腹はそのまま閉じられてしまいました。そして家族は、余命3ヶ月と宣告されてしまったのです。

本人も家族も絶望のどん底でした。そこで考えた末に、命の短い本人をこれ以上苦しませることはできないと、病院からすすめられていた抗癌剤の治療をすべて断って、早々に退院させてしまったと言います。ところがその2年後、本人は元気な姿で村の講演会の花束贈呈の壇上に登場したのです。

抗がん剤治療を断って退院した後は、患者は、私たちが本拠地としている前橋でリンパ球免疫治療を受けることになりました。婦人は東北の片田舎から、夫に伴われてはるばる上州は前橋までやって来たのです。そのとき持参したCT写真では、なんと脾臓の1/3近くが癌に占拠されていました。その上に腫瘍マーカーのCEA(カルチオ・エンブリオニック・アンチジェン)の値も正常値を超えて高い値を示していたのです。

一般に、腫瘍マーカーのCEAの値は、胃癌や大腸癌などのような腺癌の場合に増加します。CEAはそれらの癌細胞で作られ血液中に放出されます。従って、大腸癌が脾臓に転移すれば、CEAの値が上昇しても決して不思議ではありません。

ところが、大腸癌が原因の癌性腹膜炎でも、CEAの値は当然上昇します。そうしますと、脾臓への転移だけが原因でCEAの値が上昇したとは言い切れないのです。実はこのように疑うのは、大腸癌の脾臓転移は非常にめずらしく、この脾臓の癌が、大腸癌の転移だとはにわかには信じられなかったからです。脾臓の癌は、脾臓原発の別のがんの可能性も十分に考えられたのです。

いろいろなことを考えながらも、私たちはその患者にリンパ球を使った免疫治療を行いました。花束贈呈のあった講演の時までの2年間に、全部で11回のリンパ球免疫治療を行ないました。本人は夫に伴われて、遠路にもかかわらず熱心に通って治療を受けました。 リンパ球免疫治療以外の治療としては、患者自身が自分で服用していたプロポリスやアガリクスなどがありますが、それ以外は特に何も行なっていませんでした。

癌の状態を調べるCT検査や一般の血液検査は、全て東北地方の手術を受けたその病院で行ないました。そして、検査のたびごとに持参してくる写真で見ると、脾臓の癌はどうも縮小する気配がありません。むしろ少しずつ増大しているようです。

リンパ球免疫治療をしたにもかかわらず癌は徐々に大きくなり、2年後には脾臓のほぼ半分が癌に占拠されるようになっていました。しかも、脾臓全体も少し大きくなり、体の外から触れることが出来るまでに増大していたのです。 それに伴って、正常値が5.0ナノグラムの腫瘍マーカーCEAの値は、17.7ナノグラムから30.4ナノグラムへと徐々にではありますが上昇していったのです。

これらの臨床結果から判断して、リンパ球免疫治療の客観的な治療効果は認められませんでした。ただし、脾臓の中の癌の増大に伴ってCEAの値も上昇したところを見ると、脾臓の癌はやはり大腸癌が脾臓に転移したものであることに疑いの余地はないようです。

このようにCT検査で見る限り、免疫治療による癌の縮小効果は認められませんでしたが、患者は至って元気です。癌で弱る気配は全くありません。それどころか、毎日の家事や農作業も普通にこなすことが出来るようになっていたのです。そしてついには、趣味の登山まで再開したと言います。一体全体どうなっているのでしょうか。

そのときのCT画像を初めの頃と比較すると、たしかに、脾臓内の癌は徐々にではありますが増大しています。しかしその癌は、脾臓からは一歩も外へ出てはいません。癌は脾臓から別の臓器に転移していないのです。

胃や腸の血液は全て門脈という静脈を通って肝臓に集められます。それは胃や腸から吸収した栄養素を肝臓に運んで、そこで化学処理したり貯蔵したりするためでもあります。同じように、脾臓からの血液もすべて門脈を通って肝臓に入ります。従って、脾臓の癌が転移するときは肝臓に転移します。しかしCT検査では、肝臓には癌は全く見当たりません。脾臓の癌がこれほど大きくなったというのに肝臓には癌は転移していないのです。何かが癌の転移を抑えているに違いありません。

その上CT検査では、いつしか腹水も消えています。しかも血液検査では、以前にあった貧血も消失し、検査した殆どの項目で異常所見はありません。更に、免疫検査として測定していたPHAリンパ球幼若化率や、NK細胞活性値も正常値を維持していたのです。

脾臓の癌は縮小するどころか、わずかずつではありますが増大しています。そのために腹も少し大きくなっているようです。それにもかかわらず、本人には特別な苦痛も無く、毎日普通の生活をすることが出来るようになっています。しかも、農作業ばかりか趣味の登山も何回も行ったといいます。命の短いことを宣告されていた本人にとっては、このように生活できることが、よほど嬉しかったに違いありません。講演会での花束贈呈を申し出て下さったのです。

講演会の直後の平成14年5月には、多くの人の要望もあって、私たちは第2の診療拠点を福島県の郡山に開設しました。前橋での診療に加えて、そこでも月に1回の診療を受けることが出来るようになりました。郡山で治療を行なえば、東北在住のその婦人も、長旅をしなくても治療を受けることが出来ます。可能な限り毎月治療を行ないました。

ところがそれにもかかわらず、癌は相変わらず少しずつ大きくなっていったのです。平成十五年に入ると、癌は脾臓の三分の二を占めるようになり、それに伴ってCEAの値も少しずつ上昇していったのです。しかし、それでも全身状態に変わりはなく、毎日普通の生活を続けることが出来ていたのです。

余命3ヶ月と宣告されてから丁度3年目の平成15年の夏には、その婦人は家族と一緒に中国旅行に出かけています。外国旅行では体は少々疲れるかもしれませんが、家族と一緒の新天地への旅は心がうきうきします。体に悪いはずがありません。免疫活性もおおいに亢進すると考えたのです。

私は、毎日の生活上のどのようなことであっても、それが楽しいことであれば、体が少々疲れたとしても積極的にそれを行うことをすすめています。それは趣味に没頭することもいいでしょう。楽しみながら行なう農作業でもかまいません。そして、入浴や観光を兼ねた温泉旅行などは大賛成で大いに勧めています。

リンパ球免疫療法以外の治療としては、「アンサー・20」の注射を行いました。これは濃厚丸山ワクチンで、普通の丸山ワクチンの成分の、100倍の量が含まれています。体内のマクロファージを刺激して、白血球を増加させる働きがあります。しかし、患者には貧血も白血球減少もありません。この場合の使用目的は免疫活性の更なる亢進です。週に1回の割合で皮下注射をしました。患者の近くの医院にお願いして合計20回の注射を行いました。

平成16年に入ったある日のことです、手術を行った病院の主治医から手紙がきました。その手紙は、私たちの行なっている免疫治療の内容を尋ねています。 病院の担当医は、脾臓の大部分ががんに占拠されているにもかかわらず、元気にしている患者の姿を見て驚いているようです。患者はその病院に定期的に通院していろいろな検査を受けていますので、病状はよくわかっていたようです。そしてその手紙には、以前に断念した脾臓摘出の手術を改めて行ってみたいと書いてありました。

実は、私もその癌がどのような性質なのか、是非見てみたいと思っていました。CT検査の写真で見ると、脾臓の大部分は癌に占拠され、正常な脾臓部分は残り少なくなっています。腫瘍マーカーのCEAの値も更に上昇し、七0.8ナノグラムと高い値を示し、明らかに癌細胞は増加しています。しかしそれにもかかわらず、脾臓の癌は肝臓に転移する気配が全くありません。肝転移巣は全く認められないのです。

がんががんであることの最大の特徴は転移することです。がんは肺や脳などの重要な臓器に転移して命を脅かします。ところが、この患者ではその転移が全く認められません。一度は腹膜や脾臓に転移した大腸癌ですが、途中でその癌の転移が中断してしまったのです。

私は手紙の返事に、「この脾臓の癌は半分眠っているのかもしれません。手術で癌を目覚めさせてしまうことが心配です」というような主旨のことを書きました。

本当は私自身も、脾臓に転移した癌を取り出し、その癌細胞の真の姿を顕微鏡で是非見たいと思ってはいますが、癌は脾臓の中にあるだけではありません。腹水こそ認められなくなっていますが、それでも以前には癌性腹膜炎があって、腹膜には癌は残っているはずです。 脾臓の癌を摘出する手術を契機に、腹膜やその他の場所にある癌が騒ぎ出すことを恐れたのです。実はそのとき、私は免疫学用語でいう随伴免疫を考えていました。一部のがんを摘出することでバランスが崩れ、他の部分のがんが増大することを心配していたのです。

その病院の医療チームは私の意見を取り入れてくださいました。手術をしないでこのまま様子を見ることに同意してくださったのです。

それからしばらく後のことです、患者は大きくなった脾臓の癌のCT写真を見て、「このまま癌が大きくなったら、がんは脾臓の皮を破って外へ飛び出してしまうのではないか」と、少し張り気味の腹をさすりながら私に心配そうに尋ねます。もっともな質問です。腹水は消失して、いかに全身状態が良くなったからといっても、脾臓は癌に占拠され、正常な脾臓部分は残り少なくなっています。そのために腹も少し張っているようです。脾臓が破裂して、癌が腹中に散らばることを心配する気持ちもよくわかります。

それに対して私は、「脾臓の皮はとっても厚くて、癌の力ではとても破ることは出来ないよ」と冗談で応えたのでした。脾臓の癌は少しずつ増大してはいますが、いまだに肝臓に転移していないところを見ると、その癌の性質はおとなしく、悪性度は低いに違いありません。そのために被膜に浸潤することはないと考えたのです。すなわちパンクすることはないと考えたのです。

この婦人は、平成21年11月現在でも元気に暮らしています。リンパ球免疫治療を開始してからでもとうに8年以上は経過しています。脾臓の癌には明らかな縮小は認められませんが、それでも癌はそれ以上に増大する様子はなく、今では大きくなる気配もありません。癌は長いあいだ少しずつ大きくなってはいましたが、それでも急激に増大することはなかったのです。

その上、癌の肝転移は全く認められていませんし、それに、免疫の力を示すNK細胞活性値も依然として正常値を維持したままです。そして本人は、癌を持ったままでも長いあいだ毎日普通に暮らしています。そして今度こそは富士登山を挙行すると意気込んでいます。この現象をどのように理解すればよいのでしょうか。

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